身体が忘れかけている動きを思い出させる5分間

「健康のために運動した方がいい」
それは分かっていても、
「どのくらい動けばいいの?」
「自分は何をすればいいの?」
と迷う方は少なくありません。

目次

現代の運動科学から「養生」を考える

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対して次のような身体活動・運動が推奨されています。

  • 今より少しでも多く身体を動かす
  • 歩行、またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(約8,000歩以上)
  • 息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上
  • 筋力トレーニングを週2〜3日
  • 座りっぱなしの時間を長くしすぎない

こうして見ると、
「結構動かないといけないんだな……」
と感じる方もいるかもしれません。

でも、私が特に大切だと思うのは、最初に書かれている、
「今よりも少しでも多く身体を動かす」
という考え方です。

身体を動かすことは、昔から「養生」のひとつ

日本には昔から「養生」という考え方があります。
江戸時代の貝原益軒『養生訓』などを読んでも、食事や睡眠、心の持ち方とともに、適度に身体を動かすことが大切にされてきました。
そして現代では、「身体を動かすことで体内に何が起こるのか」についても、さまざまな研究が進んでいます。

その一つが、最近私が興味を持っている「マイオカイン」や「エクサカイン」です。
筋肉は、単に身体を動かすだけの器官ではありません。
運動によって、筋肉をはじめとするさまざまな組織から生理活性物質が分泌されたり変化したりして、身体の中でさまざまな情報のやり取りが起こることが分かってきました。

身体を動かすことと病気の予防

身体活動と病気の予防との関係についても、多くの研究が行われています。
国立がん研究センターでは、日本人を対象とした研究をもとに、身体活動によって大腸がん、特に結腸がんのリスクが低下することを「ほぼ確実」と評価しています。身体活動と乳がんリスクの低下についても研究が蓄積されています。
また、日常的に身体を動かすことは、2型糖尿病や心血管疾患などのリスク低下とも関連しています。
がんをはじめ、生活習慣病を心配される方は少なくありません。

もちろん、運動をすれば病気にならない、ということではありません。
しかし、日常的に身体を動かすことが、健康を守るために私たち自身ができることの一つであることは、ぜひ知っておきたい情報です。
そして、
「なぜ運動がこれほど全身に影響するのだろう?」
その仕組みの一つとして現在研究されているのが、マイオカインやエクサカインです。
筋肉を動かすことで起こる変化が、代謝や炎症、免疫などを通じて全身へどのような影響を及ぼしているのか。現在も研究が進められています。
もちろん、昔の人がマイオカインやエクサカインを知っていたわけではありません。

昔の養生と現代科学は、別の視点から身体を見ています。
けれど、経験から「身体を動かすこと」を大切にしてきた昔の養生と、運動による身体の変化を詳しく調べる現代科学。
その二つを並べて眺めてみると、とても興味深いものがあります。
これも一つの「温故知新」ではないでしょうか。

まずは5分、身体を動かしてみる

では、何から始めればよいのでしょう。
私はまず、5分でいいと思っています。

伸ばす。
縮める。
捻る。
肩甲骨を動かす。
背骨を丸めたり伸ばしたりする。
身体をゆっくり捻る。
股関節を動かす。

決まった「型」でなくても構いません。
普段あまり使っていないところを、痛みを我慢せず、気持ちよく動かしてみる。

私はこれを、
「身体が忘れかけている動きを思い出させる5分間」
と考えています。

最初から毎日8,000歩を目標にしたり、すべての運動目標を一度に達成しようとしたりしなくてもいい。

まず5分。

慣れてきたら、歩く時間を増やしてみる。筋力を使う運動も少し加えてみる。
自分の身体と相談しながら、少しずつ続けていけばよいのです。

自分には、どんな運動が合っているのだろう?

一方で、
「身体を動かした方がいいのは分かっている。でも、自分はどんな運動をしたらいいのだろう?」
と悩んでいる方も少なくありません。

年齢も違えば、身体の状態も違います。
仕事や生活環境、運動経験、抱えている不調も一人ひとり違います。

和氣香風では、漢方相談や鍼灸治療のあとに、必要に応じた運動養生もお伝えしています。
その方の身体や生活に合わせて、無理なく続けられそうな方法を少しずつお伝えしています。

治療を受けている時間より、自分の身体と過ごしている時間の方が、はるかに長い。
だからこそ、日常の中で自分の身体を養っていく。

まず今日、5分だけ。

身体が忘れかけている動きを、思い出させてみませんか。

養生は、そんな小さなところから始められます。

鍼灸師 国際気功師
山本浩士