異常歩行の改善例

健常者の歩行とは違う、いわゆる「異常歩行」と呼ばれる歩行があります。
足を引きずって歩いたり(引きずり歩行)、小刻みに歩いたり(小刻み歩行)、少し歩いて休むことを繰り返す歩行(間欠跛行)、沢山の異常歩行があります。

長時間の正座で足が痺れた時に、うまく足が動かせずに歩いた経験はないでしょうか?
鶏が歩くように膝を高くあげて歩いてみたり、足を外側にふり回すように歩いてみたり、いつものように歩けない状態を経験された方は少なくないかと思います。
これらは直ぐに治るため異常歩行とは言いませんが、この状態が続けば異常歩行と呼ばれるようになります。

原因は様々ですが、なんらかの理由により運動神経が麻痺したことで起こることが多いかと思います。

漢方医学には、「痹(痺)証」「痿証」という症状があります。
こうした異常歩行は、痺証や痿証によく見られます。

 

【痺証】は「つまって通じない」ことを意味します。
「風・寒・湿」といった外部要因によって、経絡の流れが塞がり、関節や筋肉が栄養されず、痛みや腫れ、重だるさや痺れなどが発症します。
慢性的な腰痛、関節炎、変形性膝関節症、リウマチ、痛風、三叉神経痛、坐骨神経痛などがこれにあたります。

【痿証】は痺証に似ていますが、それがさらに悪化し「手足の筋肉が弛緩し無力となり、悪化すれば萎縮する運動障害」を意味します。
「湿熱・脾胃の虚弱、肝腎の陰虚」などが要因となります。
重症筋無力症、小児麻痺、小児麻痺後遺症、多発性神経炎、脊髄炎、各種の麻痺などがこれにあたります。

現代医学では、どの神経が障害されているかで「○○神経麻痺」「○○神経痛」という風に名前が付けられますが、鍼灸医学では基本的にそのような分類はありません。

もう少し大雑把に、どのルート(例えば胃経筋)が痺なのか痿なのか、風熱なのか腎虚なのか、というような分類をします。

どの証も、なにかの要因によって経絡脈の流れが悪くなり、経筋(筋肉、筋膜、ファシア、末梢神経系など)の機能が低下したことで起こると考えます。
正座で足が痺れて動かせないのも、横向きに寝ていて、下側の腕が痺れて動かせないのも、一時的な「痿」だといえます。

漢方薬で血流をよくさせながら、鍼灸で麻痺した筋肉を回復させるようにしていくことが多いのですが、鍼灸だけの方もおられます。
詰まりを取り、疏通させ、筋肉の動きを回復させることが大切です。

やはり、脳卒中の後遺症の方が多いですが、スポーツ障害からの麻痺、腫瘍が原因の麻痺といった症例もあります。

臨床例 40代女性

初回

腰椎にできた腫瘍が影響し、下肢に片麻痺が発症。
麻痺側は、膝をうまく上げることができないため「ぶん回し」様の歩き方がみられました。

気血の流れが弱くなり、詰まって腫を生じ、それが筋の栄養を阻害し痿証が発症したと考えられます。
まずは、弱った「経筋」の流れを繋ぎ、体を温めて気血の流れを疏通させることをしていきます。

ベッドに寝かせ、麻痺側の足首から施術を開始。
理論としては「経筋治療」となります。
すぐに、反対側や腰の筋肉に反応があらわれ、足に力が出てきます。
局所と全身の施術を行い、全身の動きが連動、連鎖するように操作していきます。

2回目

1週間後の来院時、ぶん回し歩行の幅が狭くなっているのを確認。
脈診と腹診をしながら、局所(麻痺した足)と全身施術を行なって終了。

3回目

さらに1週間後。
足を引きずる感じの歩行(鶏歩のような歩行)ではあるが、ぶん回し動作はかなり消えていました。

ご本人からは、
・歩く時の横幅が狭くなった
・いつもは自転車を降りて押していた坂道で、降りずにこいで登れた
・両足で自転車をこいでいる感じが強く出てきた
といった報告をいただきました。

問題の腫瘍がどうなるか?ほかの症状がどう改善するか?という大きな課題は残っていますが、動作面での改善は回を重ねるごとに現れています。

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和氣香風
鍼灸師 山本浩士