WEBマガジンの取材

和氣香風、鍼灸担当の山本浩士です。

先日、WEBマガジンの取材が入りました。

ライターさんが、ネタ探しで自由が丘を歩いている最中に和氣香風を見つけ、今回の取材に至りました。

漢方薬や鍼灸についての内容ではなく、「自由が丘にこんな店あるよー」という紹介記事になるとは思いますが、ライターさんとカメラマンさんにも鍼を体験していただきました。

せっかくなので「接触鍼(刺さない鍼)」を使いました。
「鍼は刺しません」というだけで驚かれますし、実際に身体の変化を感じられるので更に驚かれます。

鍼灸師としてニヤリとする瞬間ですね。

【接触鍼法との出会い】

私が神戸の鍼灸専門学校に入学したとき、すぐに数名の友人ができました。

そのひとりのK君は、お父さんが神戸で長年鍼灸をされている先生で、その先生の流儀の薫陶を受けていました。

K君のおかげで、学校では習うことのない古典医学の知識や技術を色々と教えてもらい、ときどきお父さんの鍼療所へ行き見学もさせてもらいました。

お父さんは、ある有名な先生の弟子になり「経絡治療」というものを学ばれ、神戸の地で研鑽と工夫を積み重ねられた先生です。

当時、私は仕事の都合で首都圏へ行くことがあり、その時に出会った鍼灸師から手ほどきを受けていました。

https://kakikofu.com/knowledge/医術修行時の話/

それもあって、K君のお父さんの弟子にはならず、経絡治療家になることも無かったのですが、大きな影響を受けたのは間違いありません。

その時に知ったのが「刺さない鍼」の存在です。

鍼をちょっとツボにあてるだけで、脈がどんどん変わり、症状もスッと改善していくのを目の当たりにし、学校の勉強と並行して、色々と自分で学んでいきました。

神戸の先生の繋がりで、更に色々な鍼灸の先生方を知り、講習会などに顔を出すことで、鍼には本当にいろんな流派、道具、技術があることを学びました。

ある勉強会では、
「こういう肩の痛みには、鍼を皮膚から1ミリ、2ミリ浮かせた(離した)方がよく効きます」
と笑顔で語りながら実技を披露された先生がいて、感動したことを今も覚えています。

 

【武術に通じる鍼術】

私は幼少から武術を嗜み、18歳の頃から中国武術を学び始めました。
その時の中国人老師は、中医師であり家伝気功を受け継ぐ先生でもあり、よく稽古後に生徒さんの怪我や不調にたいして気功治療をされるのを見てきました。

また、友人の中にも気功治療をする人がいて、友人から色んな話を聞いていました。

ですので、「刺さない鍼」の存在になんの不思議も疑問も抱きませんでしたし、そもそもそういう世界を深めるために鍼灸師の道に入ったので、「刺すか刺さないか」「何センチ刺すかどうか」というのはあまり関係が無いと思っていました。

武術で学んできたことが、鍼に活かせることもわかってきました。

https://kakikofu.com/knowledge/yojo/医武同源/

鍼も道具です。
道具であるからには、それを扱う人の力量が大事です。
そうして、道具や技術を使う対象、相手、患者がいます。

それは、どの世界(業界)でも同じです。

https://kakikofu.com/knowledge/shinkyu/鍼を打てる身体/

相手を投げ飛ばす、突き崩す、締め落とす、武器を扱う。
全ては「身体」あってこそ。
「技」が効くのではなく、技を効かせられる「身体」あってこそ技や道具は効果が出ます。

鍼も同じです。

【被災地で接触鍼が活躍】

私は阪神淡路大震災を経験しています。

その経験もあって、東日本大震災の時には宮城へボランティアに通いました。
避難所で活躍したのが「接触鍼」です。

震災のあった日、私はニュースを見てすぐに母校へ連絡をして「ボランティアに行きたいからサポートして欲しい」と伝えました。

阪神淡路大震災で多くの人にお世話になったので、今度は自分で御礼を返したい!という気持ちでした。

しばらくすると母校の先生から電話があり、兵庫県が宮城へ使節団を出すことがわかりました。
県知事、県庁職員、医師、看護師・・・そういった面々の中、兵庫県鍼灸師会にも声がかかり、そこから私に声がかかったという次第でした。

「行きます!」と即答し、数日後に数台のバスで宮城へと向かいました。

 

帰宅後、現地で知り合った宮城県庁の職員さんに電話をし、ボランティアに行って良いか?と相談すると快諾して頂き、私は「松島」の避難所へ単身向かうことにしました。

最初は20日ほど宮城の友人宅へ滞在しながら、松島にあった2箇所の避難所を行き来し、1日30〜50名の方に鍼をしました。

・プライバシーはない
・余震は頻繁に起こる
・みんな鍼灸をあまり知らない

本当にさまざまな問題がありました。

そんな状況ですので、鍼を打つときは置鍼はせず、一本の鍼を抜き差しする技術を用いました。
さらに、深く刺さず、数ミリ程度までにとどめるようにしました。

これなら、余震があってもすぐに鍼を抜いて避難ができますし、もし鍼の最中に身体を動かしても問題ありません。

色々工夫する中で、K君とそのお父さんから教わった理論と技術が活きてきました。

手先足先だけのツボで全身の不調を調える方法です。

さらに「刺さない鍼で効果を上げる」ことに専念し始めました。
中国武術道場で見てきた「気功治療」や、講習会で体験した「皮膚から離して効果を出す」ことも加え、プライバシーのない避難所で、衣類を脱がずとも鍼が出来るように工夫していきました。

実際、ストレスが凄まじい状況でしたので、それに伴う不調が多かったです。

・久しぶりに便が出た
・ちゃんと生理がきた
・夜ぐっすり眠れた
・腰の痛みが軽くなった
・身体の疲労が楽になった

そういう声をリアルに聴きながら、一心不乱に鍼をする日々でしたが、それがかなり私の経験値をあげてくれました。

その後、各地の鍼灸師たちが動きはじめ、ボランティア団体を作る方が増えてきました。

こうなると、そういう方々に任せたほうが良いと思い、私の活動は終了しました。

【鍼は心で打つ】

昔の医学書に、鍼の深さは実際の鍼の長さではなく、志の深さで決まる、というような教えがあります。

志となるとちょっと難しいのですが、言い換えれば「心で打つ」ということでは無いでしょうか。
ある先生にも、言い方は違いますが同じように教わりました。

実際には「心」以外の単語があるのですが、心で思い、心で決めて、心をもって鍼を打つ、そういうことで良いと思います。

だから、鍼を接触させても効果が出るのでしょう。

今回のWEBマガジン取材では、こういう話まではする時間もありませんでしたが、刺さない鍼の体験をしてもらえたことが私は嬉しかったです。

 

鍼がゆっくり打てない状況で、鍼灸師として治療をすることもあるでしょう。
消毒薬が無いかも知れません。
そもそも手元に鍼が無いかも知れません。

道具があれば道具を使い、何も無くても身体がある。

私の武術と鍼術に対するスタンスですが、こういう環境の中で培われてきました。

まだまだ腕は未熟ですので、師の背中を目指して今後も修業を深めていきます!!