食中毒とお灸

夏になり、ニュースなどで話題になることの一つが「食中毒」です。
野菜や果物もおいしい季節ですが、足が早く傷みやすいのが困りもの。
気をつけていても、知らずに傷んでいるものを食べてしまったり、なま物を食べて下痢をしてしまったり・・・
食中毒とは、食べ物に何らかの有毒・有害物質が含まれ、それを食べた時に「下痢」「嘔吐」「腹痛」「発熱」「蕁麻疹」などの胃腸炎症状を起こすことをいいます。
原因は「細菌」「ウイルス」「寄生虫」「自然毒」「化学物質」など多岐にわたります。
最近テレビで良く見かけるのが「アニサキス」です。
魚介類に寄生する寄生虫で、アジやサバ、イカ、サーモン、カツオなどを刺身で食べて中毒を起こします。
アニサキスは、食後数時間から半日ほどで強烈な腹痛、吐き気、嘔吐を発症しますので、即病院で処置してもらえば大丈夫。
あとは、夏に多い食中毒の原因に「ノロウイルス」「サルモネラ菌」「病原大腸菌」 などが挙げられます。

出典:農林水産省Webサイト

食中毒の患者数で多いのは「ノロウイルス」ですが、事件として厚生省に取り扱われるのもので一番多いのが「アニサキス」です。
余談ですが、川や湖で遊ぶときに気をつけてほしいのは「アメーバ」です。
私は、大学生の時にラフティングガイドのアルバイトをしていて、様々な水辺でのトラブルを勉強します。
その中に「アメーバ赤痢」がありました。
主に、水の悪い途上国で多く日本ではまず気にすることはありませんが、やはり川や湖で泳ぐ時には「生水を飲まない」ように注意が必要ですね。
アメリカなどには「フォーラネグリア(脳食いアメーバ)」という、鼻から脳に入っていくアメーバもいるそうで、一時期話題になったこともあります。
日本では、戦後あたりまで水の質が悪かったため、「赤痢菌」に多くの方が感染しました。
こっちは、アメーバではなく細菌感染ですね。
赤痢菌は、大腸の粘膜に炎症を起こし、下痢や腹痛、発熱を引き起こします。
今は、上下水道がかなり普及し、飲み水の質が良いため、ほとんど起こることは無いようです。
日本は大丈夫でも、海外へ遊びに行く場合はとくに注意が必要です。
生水は飲まない、水道水も極力飲まない、生魚は食べない、生野菜(サラダ)も極力食べない。
できるだけ、火を通したものを食べ、飲み水は店で買うか、お茶にしましょう。
私の病理学の恩師(某医科大病理学部長)も、なま物の危険性をよくおっしゃられ、学会などで海外へ行く時は、サラダも絶対に食べない!と、その理由も含めて聞かせてくれました。

~食中毒に対する漢方の考え方~

食中毒というのは、何も現代人だけの問題ではありません。
そもそも医学というのは、細菌やウイルス、寄生虫や毒物との対決の歴史だと言っても良いかも知れません。
中毒というのは「毒に中る(あたる)」という意味です。
食べ物に含まれた毒にあたってしまい、腹痛や下痢、嘔吐や蕁麻疹を引き起こし、それに対処する漢方薬や鍼灸が研究されてきました。
食中毒になると、だいたい「下痢」「腹痛」「嘔吐」を発症することから、こういう疾患を「痢疾(りしつ)」と呼びます。
「痢」は「はらくだし」という意味がありますので、「下痢」「赤痢」などは痢疾のひとつです。
主に「油っこいもの」「なま物」を食べることで起こりますが、同時に「そもそも飲食の不摂生がたたり胃腸が弱っている」ことも引き金として考えられます。
胃腸が弱く、元気もなく、血行が悪く、体も冷え、「寒」「湿」「脾虚」の状態にある人は、ちょっとした毒にもすぐ反応し、痢疾になりやすいと考えますので、そういう体質の人は殊更に「なま物は要注意」で過ごしましょう。

~食中毒とお灸治療~

先日、急患依頼が入りました。
話を聞くと、出かけた先で美味しいものを食べ、その翌日から「蕁麻疹」が出て全身が痒いとのこと。
手足、胸、首、背中にかけて、赤い発疹がたくさん出ていました。
何らかの、食中毒だろうと思います。
ただ、強い下痢もなく、腹痛や発熱も無いとのこと。
強い毒に中ったのではなく、軽微な毒素へのアレルギー反応かも知れません。
脈を取りながら、腹診をし、過剰な圧痛がないかチェックをします。
その上で、古来から中毒でよく用いられるツボにお灸をしました。
・曲池(きょくち)
・肩髃(けんぐう)
・裏内庭(うらないてい)
このツボの中で、特に圧痛のある点にお灸を据えます。
特に裏内庭は、食中毒には必ずといっていいほど用いられるツボです。

そのあとで、もう一度脈と腹をチェックし、必要に応じた鍼を行って治療は終了。
同時に、妻に弁証をしてもらい「解毒のための漢方薬」を数日分出して終わりました。
生きている限り、細菌やウイルスへの感染、中毒は避けきれません。
大事なのは、常に体の抵抗力、治癒力がしっかり働いている状態にしておくことです。

・食事
・睡眠
・仕事
・対人関係

こういうことで、変なストレスを作り、本来もっている治癒力を低下させるのはもったいない。

熱中症に気をつけながらも、
・適度に日光にあたる
・適度な運動をする
・夜ふかししない
・仕事も頑張りすぎない
・SNSなんかはてきとうに
・冷たいものを飲みすぎない
・なま物は要注意
・体を冷やさない工夫

その上で「週に2〜3回のお灸の実施」をオススメします。
お灸は、免疫機能を活性化させるので、食中毒の予防(あるいはその後のケア)にもってこいです。
そうして、夏を楽しく元気にすごしましょう。
(以下参考までに)
下痢と萬金丹
お灸で白血球を増やす
夏は胃腸を元気に
夏は陽気を養おう
お灸で養生

目黒区自由が丘 漢方鍼灸和氣香風
鍼灸師 山本浩士