鍼灸師の山本浩士です。
性別を問わず、意外と相談されるのが「便のトラブル」。
男性は「軟便や下痢」が多く、女性は「便秘」が多いようです。
もちろん、男性の便秘もありますし、女性の軟便もありますが、「女はつまる、男はくだる(著:水上健)」という本もあるほど、男性は下し、女性は便秘に悩むことが多いようです。
《便のトラブルにも色々原因がある》
一言で便秘や下痢と言っても、その原因や発生機序はさまざまです。
便秘の場合
・ストレスなどで腸が痙攣する「痙攣性便秘」
・腸が疲弊したために起こる「弛緩性便秘」
・腸の水分が奪われて起こる便秘
・トイレを我慢しすぎて起こる便秘
・腸に腫瘍などができて腸管が狭窄して起こる便秘
・腸が捻れて起こる便秘
分類すればまだまだ原因はあります。
下痢や軟便の場合
・ストレスが原因となる「過敏性腸症候群」
・腸の捻れや下垂によって起こる「過敏性腸症候群」
・胆汁が多く出過ぎて起こる下痢
・腸炎やクローン病、腫瘍などによって起こる下痢
・飲食不摂生による下痢
やはり色々ありますね。
アレルギーから起こる場合も少なくありません。
便秘や軟便などで悩まれる方は、生活習慣を一度見直すことも大事です。
《漢方で見る便のトラブル》
漢方医学では、ざっと「虚」「実」「寒」「熱」を見極め(弁証)、それにあった処方を出します(弁証論治)。
例えば緊張からくる便秘なのか(実)、弛緩したために起こる便秘なのか(虚)。
私の母もキツイ便秘で、母には「おはらい丸」を送っています。
これは漢方薬とは少し違い、日本伝統の「和漢薬」のひとつで、伊勢の有名な薬です。
これを飲むと便が出やすくなる、そう母が友人に話したところ、その友人も便秘があるので「おはらい丸」を飲みたいと言うので送りました。
しかし、その方にはあまり効きませんでした。
そこで「下通丸」という漢方薬を送りました。
これがよく効いたようで、今でも続けて送っています。
下通丸は、「潤腸湯」という漢方薬をベースに「建林松鶴堂」というメーカーさんオリジナルの漢方薬です。
それ以外にも「通導散」や、それを錠剤にした「ツードーン」、または「麻子仁丸」とそれを錠剤にした「マシニーン」などを常備し、その方の弁証に合わせた漢方薬を提供しています。
ストレス性の過敏性腸症候群の場合、やはりその状態に合わせた漢方薬、たとえば「半夏瀉心湯」などを使うことが多いです。
漢方薬に興味のある方は、ぜひ私たち夫婦が監修した「漢方薬絵ずかん」を読んでください。
便秘 102ページ〜
下痢 110ページ〜
《鍼灸で便通を改善》
私の経験上、鍼灸をすると直ぐに胃腸が動きますので、治療中にトイレへ行きたくなる方もおられます。
便秘でも軟便でも「虚実寒熱」に合わせて鍼や灸をします。
例えば・・・
舌や脈を見て、虚実を考えながら、腹診(お腹の触診)をします。
脈やお腹からでも、かなり多くの情報をもらえますので大事な技術です。
色々技法や理論はありますが、私はまずお腹への鍼を行います。
中脘、下脘、水分、天枢、大巨、大横、石門、関元などなど。
お腹の状態に合わせて、その時その時の指の感覚で鍼を打ちます。
打った状態で、集中しながら鍼を少し動かします。
それは「釣り」に似ているかもしれません。
お腹を海や川として、そこに鍼を垂れて魚を釣るわけです。
鍼や指を通して、お腹の中が振動したり、腸の蠕動運動を感じたり、グルグルと腹鳴を聞くことを一つの目安にします。
その時に、脈のチェックも行います。
そうして、背中や腰にも同じように鍼を行います。
必要に応じて「お灸」もやっていきます。
例えば「脾虚」なのか「腎虚」なのか「気虚」なのか「瘀血」なのか、弁証に合わせた手足末端の経穴への鍼もおこないます(本治)。
逆に、手足への鍼を先にしてからお腹などへ行くこともあります。
その辺は臨機応変です。
こういう風にしていくと、人によっては数分で便意をもよおされる方もいます。
例えば、1週間ほどキチンと便が出ていない女性を治療したときのことです。
鍼をした日の夜、お腹が痛くなってトイレへいき、溜まりきった便がスカッと出たそうです。
過敏性腸症候群の相談は、やはり男性が多いですね。
仕事のストレス、学業のストレス、男性はストレスに弱く、胃腸にすぐ症状として出てくる気がします。
《鍼灸と漢方薬を併用!》
器質的なものなのか、機能的なものなのか。
便の問題もさまざまです。
腸の捻れ、内臓下垂、癌やポリープなどの場合でも、鍼や漢方でも対応できます。
和氣香風には、腫瘍の相談も少なくありません。
いずれ、その辺の臨床話も書いていければと思います。
鍼灸をやって、普段は漢方薬をしっかり飲んでいく。
この併用が、やはり一番良いと思います。
そこに加えて「気功」をやっていくともっと良いですね!!