漢方医学は古代の科学
私は、薬日本堂漢方スクール大阪校で「経絡」の授業をしています。
授業の中で、必ず伝えることがあります。
「知識が欲しいなら古典を読んでください。本を読んで得られることは本を読めばいいのです。読んでも解らないこと、本には書いていない事をここ(授業)で教えていきたいと思います」
これは、僕が先生に言われてきたことそのものです。
(前回のコラム参照)
「知る」ことと「解る」ことは違います。
例えば、自転車に乗ったことが無い場合、サドルにまたがってペダルを漕げば良いことは「知って」います。
でも、実際には乗れません。
実際に乗り始めることで、自転車に乗るということが「解る」ようになります。
科学とは「新たに実験や観測そする必要がある未解明な対象」に対しての関連性や法則を見出し、実証するための体系的方法。
という定義があるようです。
わからないこと、知らないこと、未知なるもの、出来ないこと。
これらに対して「仮説」をたて、実験と検証を繰り返し、出てきた結果を分析し、結果を出し、立証していくこと。
これは漢方医学の大事なポイントです。
四診から仮説をたて、生薬を配合し、投薬させ、その結果を分析、検証し、結果に対して対応をしていきます。
つまり、漢方医学は古代の科学であり、科学的アプローチを通して発展、継承されてきたものです。
「経絡」や「ツボ」を学ぶ場合も同じです。
知識が欲しいなら、ジャンルを問わずたくさん本を読めば良いのです。
大事なのは、知識を得たら、あとは自分で実験、検証、分析、反省、応用していくこと。
本を読んで暗記したものは「知っている」けど「理解はしていない」と言えます。
よく先生に、そうやって怒られたもんです。
知識は役立ちますが、理解する上では邪魔になりやすいのです。
薬膳を勉強する方からよく聞くのが「気・血・水」という言葉です。
それは、自分で実験、検証、分析をし、「知っている」のではなく「本当にわかって」いますか?
そう自分に問うと良いですね。
本で読んだだけで終わらず、先生の言った言葉を知っただけで満足せず、自分でわかっていくことが重要です。
仮にわかったとしても、そこにも段階があります。
その理解では足りないことが多いんです。
車の運転も同じです。
運転の仕方を知り、実習し、運転を理解し、免許を得たとしても、プロレーサーのような運転はまだ出来ません。
わかった所から、さらに掘り下げて検証、実証を続けていけば、いつかは華佗や扁鵲のような名医になれるかも知れません。
知ったなら、自分で実証してこそ科学ですし、だからこその医学で、だからこそ面白いですね。