鹹豆漿

我が家では、かなりの頻度で、「鹹豆漿」を作って朝食べています。

「鹹」は「しおけ」「しおからい」という意味。
「豆漿」は「豆乳」のこと。
つまり、鹹豆漿は「塩気のある豆乳」って事です。

台湾などではポピュラーな朝食です。

【豆乳と酢があればすぐ出来る!】

材料
無調整豆乳 200ml
酢 小さじ 1.5〜2
醤油 小さじ 1
その他 好きな薬味など

豆乳の量、あるいは酢の量を変えると凝固度合いが変わります。
お好みで試してください。

酢も、米酢や穀物酢、黒酢など色々あるので、色々ためしてお好みの味を探すのも楽しいです。

作り方は簡単で、

①豆乳(成分無調整が好ましい)を沸騰手前まで温めます。

②豆乳を温めている間に、お椀に酢や醤油を入れておく。薬味にはザーサイや漬物など「塩味」のあるものを刻んで入れるとおいしい。

③温めた豆乳を一気に注ぎ入れる

④好みで辣油や胡麻油を回し入れる

以上です。

本場では、ザーサイなどを炒めた具材を入れたり、油条という揚げパンを入れます。

ポイントは「酢」を入れることです。
酢のタンパク質凝固作用で、温めた豆乳がふんわり固まり、独特の食感が生まれます。

酢を入れなければ、固まらないので「豆漿(豆乳スープ)」ということになります。

このへんも好みですね。

【豆乳を活用しよう】

私は小さいころから豆乳が好きで(牛乳は嫌いだった)、それがこうじて豆腐や豆花も自作します。

豆乳は、大豆タンパク質が主成分ですが、色んな方法で凝固します。

この大豆タンパク質は「アミノ酸」が数珠つなぎのように集まって構築されています。

アミノ酸とアミノ酸を結合させるのは水素成分、つまり「水」です。

その結合を分解し、水が抜ければ凝固するということです。

そのため、豆腐や豆花を作る時は、調整されていない豆乳が必要です。

調整豆乳は、飲みやすいのですが添加物が多く、豆乳濃度が低いです。
そのため、うまく凝固しません。

豆醤の場合はなんでも良いのですが、豆腐や豆花を作る時は、豆乳濃度(大豆固形分)が10%前後のものを選びましょう。

だいたい容器の成分表に記載があります。

まず、純粋に加熱すれば「湯葉」ができます。
熱で水が飛ばされ、タンパク質変性によって凝固するからです。
でも、豆腐にはできません。

次に「鹹豆漿」ですが、これは「酢」を入れます。

酢の成分(酢酸)が、大豆タンパク質を固めるのですが、大さじ1程度ではそれほど固まりません。

レモンなどのクエン酸でも凝固しますが、やはり強く凝固はしません。
かなり大量に入れると固まるそうですが・・・酸っぱいですよね。

豆乳が古くなると、雑菌により酸化します。
すると塊ができてきます。
まー、この場合は捨てましょう・・・

次に「豆腐」と「豆花」ですが、豆腐には「にがり」を使い、豆花には「石膏」を使います。

にがりは、海水から塩を作った時の副産物で「塩化マグネシウム」でできています。
石膏は「硫化カルシウム」でできています。

この2つは、二価イオンで出来ているため、大豆タンパク質をたくさん結合させます。
そのため、凝固より「凝集」という、より強い作用で固まっていきます。

そうして、「水」が排出されます。
豆腐を作ると、自然と水気が出てきます。
それを飲むと、独特の塩気と苦味があります。

さらに水を抜くと「木綿豆腐」になります。

石膏は、タンパク質と水を含めて固まります。
そのため、豆花を作るとあまり水気は排出されず、豆腐よりもプルッとした感触のものができます。

豆乳を加熱する時は「沸騰させない」ことがポイントです。

沸騰させると泡がたつのと、熱で凝固するので舌触りがイマイチです。

あと鍋が焦げます。
片付けも考えると、テフロンの鍋が使いやすいですね。
それかホーロー。
アルミ鍋は、洗うんが大変です。

あとは、丁寧にかき混ぜながら70ー80度くらいの加熱で大丈夫です。
温度計があれば、必ず温度を測りながらやるとうまくいきます。

そこに酢や石膏、ニガリを入れれば固まります。

豆花は石膏(食用あるいは医療用)を使いますが、「寒天」などで固めると店のツルッとした感じが出ます。

ゼラチンは動物性なので、ちょっとクセがあります。
寒天やと、爽やかな感じがします・・・個人的な感覚ですが。

石膏で固めると、豆腐寄りの感触になります。

【漢方と豆腐】

漢方では「酸味は収斂作用がある」と言います。
朝、鹹豆漿を作りながら、「あぁ、酸は収斂やからな」と一人納得しながら、美味しく頂いています。

ちなみに「石膏」は、漢方薬でも「清熱解毒」によく用いられます。
浮いた熱を一気に下げて出すそうです。

「喉が痛む時」にはよく「桔梗石膏」という漢方薬を飲みます。

他にも「麻杏甘石湯」「越婢加朮湯」「防風通聖散」「釣藤散」「消風散」などにも石膏は使われています。
どれも炎症を抑える目的の漢方薬ですね。

僕はその医薬品の石膏を「豆花」作りに使っています。

漢方医学は、古代の科学。
漢方薬は、古代の化学
鍼灸は、古代の解剖・生理学。