原因不明の手の痛みと握力低下

手の痛み、違和感、握力の低下といった相談もよくあります。

ちょっとした痛みから、慢性的に痛むものまでさまざま。

先日、指先から手掌の違和感、軽い痛みの相談をうけました。
日常的に手に違和感があり、時々痛みも出て、最近では握力の左右差が気になるようです。
病院で検査をしても特に異常は見られず、しいて言えば頚椎の隙間が狭くなっている・・・と言われたそうです。
そんな状態ですから、病院では特に治療することもなく、様子を見てと言われたそうです。
こういう例はよくあります。

和氣香風にときどき来られる某医大の教授(外科)も、後輩に検査をしてもらっても原因はハッキリせず、特に治療法もない(ブロック注射や手術はある)といわれて困る・・・と言われます。

鍼灸は、体の潜在機能、可能性を引き出すものだと和氣香風では考えます。

恩師のひとり(某医大の病理学教授)にも、「医者で治せるものは医者に任せればいい。医者で治せないものを君たちが治しなさい。そこに大きな意義と価値がある」と言われてきました。

和氣香風での治療の流れを書いてみます。

まずは動作確認。
どの動作、角度、位置で症状が出るか、あるいは減弱するか、そういうことをざっと調べます。ご自身で再認識・自覚してもらうことが、まず大事になります。

鍼灸では基本的に「経絡」を操作します。
経絡にもいろいろ分類があって、筋肉や関節、神経の問題の場合は主に「経筋」という理論をベースに考えていきます。

経絡は臓腑(内臓)から始まって、末端へ向かい、そこからまた臓腑へと還ってくる一連の循環を示します。

経筋は、基本的には末端・末梢部から中心・中枢部へと向かう流れを示しており、筋肉・筋膜・靭帯・結合組織などの繋がりを考えていきます。

痛みなどは主に神経伝達によって行われると考えられていますが、そこにもいくつか学説があります。
まず「シナプス性伝達」。これは、神経を通じて情報が伝達される方式。
もう一つは「非シナプス性拡散性神経伝達(NDN)」。これはシナプスを介さずに血液や脳脊髄液を伝わって伝達する方式。

学説は色々ありますが、末端から脊椎などを経由して中枢へ伝達していることに変わりはありません。つまり、経筋の法則です。

経筋学、経絡学、現代神経学、生理学、その他・・・理論は理論として、使い分けることでより便利になるかと思います。
その時代、状況、環境に合わせたものを選ぶと良いでしょうね。

理論は理論として尊重しながらも、理論に頼らず、あくまでも己の手で得たもの、技術、これらを施して結果を生み出す。
これが和氣香風の鍼灸治療における前提です。

 

さて。今回のケースは、手に現れた異常、違和感です。
ですから、まずは末端から操作をして中枢へ繋げ、そこからのフィードバックを作り出します。

まずは、脈診と腹診をして、全体の虚実・寒熱、停滞の有無などを確認しておきます。
その上で、主訴である手の問題に取り掛かります。

違和感のある手に軽く触れ、関節に圧力をかけながら屈曲や伸展といった動きを誘導します。この場合、患者さんはほぼ何をされているかはわかりませんし、見た目にもあまり動きはありません。しかし、触れたことで体のスイッチは入るので、なんらかの伝達が即時にスタートします。

車のアクセルをほんの軽く踏むだけで、重い車がスイスイ動くのと同じように、指先にほんの少し刺激をいれるだけでも、全身に大きな動き、繋がりがうまれてきます。

そういうことを2-3分やってから、ご自身で動きや痛みのチェックをしてもらいます。すると、違和感はかなり改善し、握った時の握力も力が入っていることを感じられたようです。

良い感じですね。

次に、背骨と背中の調整をします。
背骨には、「督脈」といった経絡(奇経)の流れがあります。背中にも「三焦経」「小腸経」「膀胱経」それを、鍼を浅く刺す、あるいは接触させながら刺激を入れていきます。

また、全身は「表裏」です。
筋肉で言えば「屈筋」と「伸筋」が協調しあって動きができています。
経絡にも表裏があります。
背中の問題は胸にも問題がありますので、そいういうところも操作していきます。

あとは、脈などから得た情報をもとに、大元の身体の調整を少しおこなって終了です。
最初にあった違和感はかなり減り、握力の左右差もなくなりました。若干の強張りはあるけれど、曲げ伸ばしも随分楽になったようです。

一回の治療で、完治とはいきませんが、最初と比べると変化が出ていることはよく自覚されます。

 

何かお悩みがある方、もう諦めてしまおうかと思っている方は、まずご相談ください