黄帝内経にみる運気

前回、運気の話をしました。
漢方は「気」を中心にした理論と技術体系であり、医学はその一部です。

自然界と肉体、そうして精神との関わり合いを重視し、流れれば良く、流れなくなれば悪い、という考えを基礎にもち、それはつまり「運気」ということになります。

漢方医学には様々な古典がありますが、その代表格のひとつが「黄帝内経」です。

黄帝内経には、大きく「素問(そもん)」と「霊枢(れいすう)」というニ書に分類されます。

その素問の中には「運気」について書かれた項目がいくつかあります。

運気とは、自然界の気の法則を読み解き、その年の気象状態を予測し、そこから生じる可能性のある災害や病気、あるいは種を蒔く時期などを推察する気象学から始まったとされています。

それが人に影響を与えます。
だから、組織や社会にも影響を与えます。
良し悪しは関係ありません。

今年は「亥年」です。
厳密には「己亥」ですね。

黄帝内経の運気論には、この意味が記載されています。

まず
甲己の歳は、土運これを統べる
とあります。
つまり、この年は土気が中心になります。

それ以外には、木気、火気、金気、水気があり、五行論によって展開されます。
そうして、それぞれに陰陽があり、一巡りするのに10年かかります。

己は「つちのと(土の弟)」とも読みます。
基本は「土気(土運)」ですが、弟であるため「陰」と考えます。

つまり、土運だけれど影響は弱いと言うことです。
性質としては、柔和であると考えます。

参考までに「戊」が「つちのえ(土の兄)であり、陽にあたります。

もう一つの「亥」ですが、これは
「種が土の中に収まった状態」
を示します。
つまり「準備期間」と言えます。
陰陽では陰、五行では水にあたります。

次に、運気には「大過」と「不及」があります。
前者は「陽・剛・強」、後者は「陰・柔・弱」となります。

甲己は土運を統べるわけですが、「甲=土運大過」「己=土運不及」と言い換えられます。

五行と陰陽(大過と不及)が10年のサイクルで一巡します。

2019年は己亥ですから「土運不及」の一年です。

黄帝内経には、土運が不及であれば、風すなわち大いにめぐり、化氣は令せずとあります。

土が弱いため、木気が強くなり、風邪(ふうじゃ)が増え、大気はあまり冷えないだろう、という事になります。

また、土が弱く、水の流れをうまく止めることも難しいため、水害なども増えるかも知れません。

土は「脾胃」であるため、それが弱いというのは「消化機能の低下」による疾患が増える可能性が高く、また風により「筋肉やスジの痛み」「精神的なイライラ」も増えやすい一年になるでしょう。

脾虚による「節々の痛み、身体の重だるさ」も多くなりそうです。

という具合に、自然界の運気から、人体にどういう影響が出やすいかを推測し、
それをどう防いでいくか?
どう養生していくか?
を考え、実践指導をする目安に使えます。

もちろん、この理論ができた時代と今は環境が異なるため、若干の修正が必要ですが、大いに参考にはなりますね。

これらは、とても大きな運気であり、それを変えるのは人間には不可能です。

しかし、その影響を受けにくい生活空間を作り、養生を実践していけば、自分自身の健康は自分で守れます。

それは、大きく社会経済にも影響を及ぼすでしょうし、日々の自分の運気にも影響を与えます。

次回は、個人の運気について少し書こうと思います。