アトピー性皮膚炎〜漢方薬と鍼灸と〜

鍼灸担当の山本浩士です。

4月頃から、相談がジワジワ増えてきたものに「アトピー性皮膚炎」があります。

アトピーは「アレルギー性疾患」の一つで、肌にさまざまな炎症症状がおこります。

「アトピー」の意味は「特定されていない」「奇妙な」とという意味のギリシア語に由来するそうで、原因が複雑でわからないことを表現し命名されたそうです。

汗、衣類、ホコリ、ダニ、さまざまな外的要因も影響していると考えられていますが原因はハッキリせず、疲労や精神的ストレス、寝不足や女性の月経なども影響していると考えられています。

実際、私たち夫婦が今までに診てきた方の多くは「仕事のストレス」「人間関係のストレス」により症状が増悪し、それらから離れると緩解するのをみてきました。

それで改善するなら、それが一番いいですね!!

《状態や部位を診る》

漢方薬や鍼灸の場合、「アトピー」という名前は参考程度にし、大切にしているのは漢方医学の「弁証」です。
これによって処方や、施術方針が決まるため最も重要なポイントです。

例えば、患部が「乾燥」しているのか「ジュクジュク」しているのか。
肌の色は「赤い」のか「黒ずんでいる」のか。
いま「かゆい」のか否か。

その他の症状は何があるのか?
舌はどうか?脈はどうか?

そういう状態の違いによって処方が異なるため、時間をかけて丁寧にチェックします。

さらに鍼灸の場合は「どこの部位に炎症が起きているか?」も重要なチェックポイントです。
それは「経絡(皮部)」を判断する材料の一つになります。

《アトピーと鍼灸》

弁証が決まれば、出す漢方薬も決まります。

鍼灸も同じですが、鍼灸はここから道具や技術を使って施術をしていきます。

症状の軽いものなら、鍼と灸を使い、あとは衛気の流れをよくします。

症状が強く出ていれば、「刺絡」を加えることもあります。
和氣香風では、主に「井穴刺絡」という爪の付け根あたりから少し出血させ、「瘀血」を絞り出す技術を行います。

場合によっては、局所(患部)への刺絡も行いますが、井穴刺絡でもかなり効果が出ます。

刺絡(しらく)という技法

https://youtu.be/zczoWK1olCY
(井穴刺絡による出血シーンがあるので、見る方は注意してください)

以前、アトピーの悪化で痒みを訴える方に、この井穴刺絡をしました。
すると、「やっている最中からスーッと熱気がひいていき、痒みが弱まっていった!」と仰られました。

このことは、他の症例でも度々見られた反応です。

刺絡までせず「吸玉」で済ますこともあります。
この辺は、現代での状況次第で臨機応変にやっていきます。

刺絡は、余計なものを取り出す「瀉」という技法に分類されます。
余計なもの取り去れば、そこに新しいものが流れて入ってきます。

また、手足末端へ鍼をおこない、患部に集まってしまった気血の流れを、全身へ誘導して散らすことも大切です。

《補瀉と本標》

アトピーで悩む方は、「この痒みをすぐなんとかして欲しい!」と思って来られるので、まずはその対処も必要です。

これを「標治」と言います。

対照的に、そもそもの体質と原因を見極め、根っこを変えていくやり方があり、それを「本治」と言います。

樹木で考えると、木に虫がついた場合、まずその虫を除去することは大事ですが、同時に、土を変え、樹木そのものの強さを高めていくことも大事です。

「本標同治」といい、根本と枝葉の問題を一緒に治していくこと、これが漢方医学の大事なポイントです。

熱があって痒い場合(実)、その熱を散らす(瀉)ようにします。

私は「散鍼」という技術で、皮下にこもった熱を外に散らして出すようにします。
「小児はり」を使うことや、刺絡や吸玉をすることもあります。

アトピーは、「熱感」「痒み」「出血」といった「実」の症状が目につきます。
しかし、その根っこには「虚」があります。

「血虚」「脾虚」「腎虚」などが絡まりあい、そこから「虚熱」を発して「熱感」「痒み」を感じる人が多いものです。

ですから「瀉」だけでなく「補」も必要です。

基本は「先補後瀉」ですが、症状によっては逆転させます。
まず今ある症状を「標治として瀉」、そのあと必ず「補(本)」を行います。

余計な「熱気」や「瘀血」を外に出す(瀉)ことで、新しい気血が流れこんでくる(補)ため、まずは瀉して「掃除」をする必要もあります。

そのあとで、不足を補うようにしていきます。

この辺は臨機応変ですね。

《特殊な漢方理論》

熱があれば冷まし、冷えがあれば暖める。
これは漢方薬の基本です。

しかし「火は火をもって制する」という考え方の一派もあります。
「火神派」といい、妻が学んだ流派の一つです。

「陽極まれば陰になる」ということで、どんどん温める処方を与えていきます。

ですので、かなり症状が悪化することもあるようで、それに耐えられない人もいる「諸刃の剣」だと妻はいいます。

ですので、基本的には穏やかに変わっていくような処方を出しますが、こういう方法もあるという紹介ですね。

《アトピーと炭酸ガス経皮ペースト》

和氣香風ではもう一つの秘密兵器があります。
それは、以前にもコラムで紹介した「炭酸ガス経皮ペースト」です。

販売元
https://wondercare.jp
研究元
http://www.neochemir.co.jp
https://www.med.kobe-u.ac.jp/co2/index.html

◇和氣香風は「炭酸ガス経皮ペースト re/me」の正規販売代理店ですので、御入用の方はお問い合わせください◇

詳しいことは、上記サイトを見ていただけば良いのですが、和氣香風ではこれを「アトピー性皮膚炎」「アレルギー性皮膚炎」「原因不明の皮膚病」「ニキビ」「創傷」などに使っています。

https://kakikofu.com/knowledge/炭酸ガス経皮ペースト/
https://kakikofu.com/knowledge/yojo/炭酸ガス経皮ペーストを使ったお客さま/

「家でもずっと痒くて眠れない」
というような場合、ステロイドを使う人が多いと思います。

私は、ステロイドを否定はせず、昔あるドクター(アトピー専門医)から教わった「ステロイドの効率的な使い方」を患者さまには提案しています。

ただ、「ステロイドは極力使いたく無い」という方も多く、そういう方にはこのペーストを使って頂いています。

実際に、これを家で使い始めた方の多くに、症状の改善が見られます。
ある方は「これを塗っていると、痒みがスーッと落ち着く」と教えてくださいました。

赤ちゃんのアトピーにも勧めています。

《和氣香風のアトピー治療+α》

和氣香風では、上記を踏まえて「漢方薬+鍼灸+炭酸ガス経皮ペースト」の組み合わせで治療を行っています。

まず、妻による漢方相談をし、弁証と方針が決まります。

そのあと、鍼灸ルームで脈やお腹を細かくチェックし、必要に応じた鍼灸、刺絡などを行います。

同時に、局所には炭酸ガス経皮ペーストを塗布し、そこへお灸などを加えていきます。

漢方薬は「粉」か「煎じ薬」などをご希望に合わせて出させて頂きます。
「炭酸ガス経皮ペースト」もぜひ併用して欲しいところです。

しかし、今までのは全て「治療」となるので、根本的な「養生」が欠けています。

そのため、
◇食事のアドバイス(薬膳)
◇養生気功のアドバイス

も行わせて頂いております。

養生が「本治」として一番大切です。
それ以外は、どうしても「標」つまり「対症療法」になってしまいます。

食事を改め、睡眠を改め、衣類を改め、過労にならないよう努め、イライラしないように努め、養生に努めてください。

お悩みの方はまずご相談ください。